はじめにお断り
※2025年12月での視点となります。
また丁寧にすべての機能を触ったわけではありませんので、組み合わせ次第では実現可能な要素や
より最適な実現方法を見落としている可能性もございます。その点を含めて、あくまで1意見・サーベイとしてご覧ください
[課題感] なぜ今「データ基盤×LLM」のサービス比較が難しいのか
データ基盤の比較は、以前なら「性能・コスト・運用性」で概ね片付きました。
ところがLLM(RAG/エージェント/社内検索/要約など)が入ってくると、評価が一気に複雑化します。理由はシンプルで、LLMは“モデル”ではなく運用されるプロダクトだからです。
たとえば「社内ドキュメントを検索して回答する」だけでも、
(1) データ取り込み
(2) 前処理
(3) メタデータ設計
(4) ベクトル化
(5) 検索・再ランキング
(6) 権限制御
(7) 監査
(8) 評価
(9) コスト最適化
…が必要になります。そして、どこか1つでも弱いとPoCは動くのに本番で止まります。
さらに、“同じ数値を見て会話できる” 状態(SSOT)が崩れると、LLMはそれっぽい説明を生成してしまい、現場の信頼を一気に失います。
弊社が支援してきた現場でも、結局のところ「手元集計」「担当者の頑張り」に戻ってしまう不安が根っこにあります。
だからこそ今回は、「DWH/レイク/ML」単体の優劣ではなく、“自社データをLLMで安全に回し切れる基盤か” を主語に記載していきます。
[軸] 比較の前提:LLM活用で増える“データ基盤の要件”
LLM時代の評価軸・機能を、ざっくり次の6群に分けてみます(ここが揃うほど、本番実装が速いイメージです)
- 一般的なデータ基盤機能(保管・クエリ・スケール):ワークロード分離、ストレージ/計算の扱い、半構造化対応、性能最適化
- データエンジニアリング:取り込み、更新やマージ、集計、ストリーミング、データ品質、ジョブ/オーケストレーション
- ガバナンス:カタログ、権限、行列マスク、リネージ、監査ログ
- LLM/生成AI機能:モデル呼び出し、ベクトル検索、RAG支援、エージェント、評価・トレーシング
- BI/意思決定:ダッシュボード、自然言語BI、共有
- 運用/DevOps:CI/CD、環境分離、テスト、コスト可視化、SLO、データ断面(復元/再現)
この軸で見ると、
Snowflakeは「DWHの中でAIを閉じる、DWHとしてLLMまでやりきる」方向性
Databricksは「レイクハウスにAI開発ライフサイクルを載せる」方向性
Googleは「BigQueryのSQL資産を起点にVertex AIへ繋ぐ」方向性
という印象を持っています。
機能比較表:Snowflake / Databricks / BigQuery + Vertex AI
まずは“LLMまで回し切る”観点で、代表機能を表に落とします
(◯=強い/標準機能、△=可能だが設計・組み合わせが重要、—=基本は別サービス前提)。
①データ基盤〜ガバナンス
※各項目に補足リンクを引用
機能軸 | Snowflake | Databricks | BigQuery + Vertex AI | コメント・備考 |
|---|---|---|---|---|
DWH(データウェアハウス) | DWHという括りになると、SnowflakeやBigQueryを思いう浮かべることが多い印象。データエンジニアリング視点だと、DatabricksはAIより | |||
レイク/オープン形式 | 第三次AIブームあたりからDatabricksは継続した概念のイメージ。マルチモーダルな視点なども踏まえて、Snowflakeは早急に手を広げてきた印象 | |||
コンピューティング/ | コンテナサービス上で利用できるインスタンスタイプはこちら | 〇(プラン次第だが、BigQueryにおいてはインスタンスやslotを指定する必要なし) Vertex AI Workbenchのインスタンスタイプはこちら | 最速で手元にあるデータをハウスに格納し加工するという視点では、BigQueryに分がある印象。プロダクティブなパイプラインではなければ、コンピュートリソースもコストもほとんど気にすることなく、利用できる。その他の視点では大きな差はないが、LLMにおけるGPUハイリソース(V100など)を使用したいケースでは、Snowflakeではまだカバーできないケースはある印象。 | |
クエリ(SQL) | どのサービスもスタンダードな機能。独自関数やSQLでなんでもできるという意味ではSnowflake > BigQuery > Databricksという印象 | |||
クエリやEDA(Python) | Notebook回りはこちら | Notebook回りはこちら | colabのプランはこちら | Pythonでクエリしたり、EDAしたりするのはDatabricksが圧倒的に有利な印象。それは後続のデプロイを加味したり、検証としてのDockerなど環境のカスタマイズ性もある。Snowflakeはその点後手にあり、データエンジニアリングからの延長性という印象。Googleも同じように、Vertex AIを用いてall in oneで実施可能。ただし個人的な印象としては、VertexはDeveloper要素が高く、カスタマイズ性は高いが、民主的なイメージは低い。またはEDA要素が強い場合は無料のColabを使うのもよいが、実質他Googleサービスと連携性が高いわけではない。(Colab Enterpriseはその点カバーされている部分あり)GPUの利用や利用費用を抑えるという意味では選択肢が上がる印象。 |
データ取り込み | Snowpipeはこちら コネクタはこちら | Auto Loaderはこちら コネクタはこちら | BigQuery Data Transfer Service 全体的にデータ基盤視点では使い勝手はあまりよくない印象 | ストレージを経由したデータ取り込みにおいて、大きな差は存在しない。コネクタも同様で、大手グローバルサービスのデータコネクタはデフォルトで存在するが、必要に応じてマニュアルコネクタを構築するか、外部サービスにて取り込みを行うかという選択肢になる。取り込みにおける差分やCDCの観点も、甲乙を設定しづらい。自動 + 差分 + 高速で取り込んでくれると良いシーンが多いが、ユースケースや設計次第であり、クエリ側の処理で補完できる機能を揃えているため、その点でノックアウトになる要素は少ない。 |
ストリーミング | Storage Write APIで自作やVertex AIへの直接ストリーム(非構造や特徴量)も可能 | この点は検証しきれていない部分も含まれるので、ドキュメントを見た限りではあるが、Googleは基本的にサービスの組み合わせやdevelopが必要であり、その他は基本的にストレージを経由したストリームを簡易に実現する機能を持つ印象。 | ||
ジョブ管理・オーケストレーション | △ ~ 〇(ML/LLMを主目的としてパイプラインであればVertex AI Pipelines) データのパイプラインが主目的ならData Fusion等 | 大前提としてデータからMLやLLMのパイプラインを網羅的に管理するのは難易度も高く、サービスとしてもカバー範囲が広く実現が難しい。その点、ML側がメインであったDatabricksはデータ側もうまくカバーしている印象。ただし、利用したいデータによってコネクタの有無を考えるとデータのジョブ管理やパイプラインは丸っと外部サービス(OSSではAirflow、有償ではTROCCOやFivetranなど)に寄せる利便性もある。Googleは実現したいパイプライン単位で選択肢が出てきそうだが、他の項目同様にData/LLMを兼ねたOpsのエンジニアが必要となるレベル感。 | ||
統合カタログ/権限制御 | データに対しての権限も細かく制御でき、共有にも強みがある | Google Cloudとしての権限なども含めて、横断サービスが多岐にわたる場合の権限設計が難解になる | SnowflakeもDatabricksもデータ権限やカタログ管理については、十分な機能がそろっている印象。細かい管理が可能だからこそ、設計に時間が必要となる。メタデータのディスカバリー等の作業はより自動化が進むため、そのあたりの作りこみや、ユースケース向けの作りこみで差が出る可能性もある。 | |
ビジュアライズ | 正直この点はあまり差にならないと考える。大前提として外部サービスを用いるシーンが多いからである。定常的なダッシュボードではなく、EDA視点での報告や一時的なビジュアライズにおいては機能があると良いが、Notebookで代用できるシーンも多いため、ビジネスユーザーでのビジュアライズ実施などケースは絞られる印象。 | |||
ビルトインなモデル | 適用できるMLモデルはこちら | AutoMLという視点では、DatabricksとVertex AIに分があるが、市場のニーズとしてAutoMLやビルトインなモデルを機能として求めるケースも少なくなっている印象。ただし、MLOpsという視点でも上記2社が有利である印象のため、MLまで実現したいユーザーにとっては、その点はよく加味する必要がある。 | ||
(コメント)データエンジニアリング視点での技術選定や開発のしやすさ主観 | 基本的なエンジニアリング視点で困る要素はないという印象。マニュアルに加え、利用ユーザーの発信も以前より多く、データ基盤を作るという視点で候補にあがらないことはない。他サービスとの連携も他社同様、dbtとの連携、マケプレを活用した連携、データ共有など、幅広く起点として扱える。特にキャリアの主点をデータベースの取り扱いやSQLでの開発においてきたメンバーにとっては、SQLベースで物事を進めることができるため、とっつきやすさもあるかと感じる。 | ビッグデータを高速に処理するというSparkから始まり、AI/MLに強みが広がり、データエンジニアリングにも及んでいるという流れの理解。その点、データエンジニア向けの細かい機能視点では手が届いてないシーンもあるかもしれない。しかし、上記の表を見ると基本的な機能は網羅されており、外部サービス(OSSも含む)との連携もかなり広い(古参扱いをするわけではなく)。データエンジニアリングを主目的に導入を検討しているが、将来的にAI/MLも実現させたい、開発言語やインフラ・パイプラインの拡張によりエンジニアのスキルセットをより広げたい場合などに候補として高まるのではないか。 | BigQueryに関して、単純にExcelやエディタでは処理しづらいレベル感のデータ処理から気軽に扱える点は相変わらず強い(課金コスト感も含めて)。億単位のレコードや数百GB単位のテーブルになってくると課金コスト的に難しいが、そこまでのサイズ感やレコード量程度であれば、無邪気にSQLを叩きながら、試しながら、利用するということが可能な印象。上記表のとおり、Google Cloudサービス内の他サービス連携・利用が前提となるシーンもあるが、実現させる方法がいくつか挙げられる、最悪コードとして実装しGoogle Cloud内で呼び出すなど、幅広い選択肢とパワープレーが取れるのは大きい。 | ー |
(コメント)データエンジニアリング視点での嬉しい機能など |
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| ー |
②LLM(RAG/エージェント)〜活用面
機能軸 | Snowflake | Databricks | BigQuery + Vertex AI | コメント・備考 |
|---|---|---|---|---|
(データエンジニアリングからの延長) | AutoMLと近しい点でもあるが、LLMモデルをデータ基盤側から呼べるかという視点。つまりデータパイプラインの中でLLMを用いた分析まで行ってしまおうという観点。基本的に各社関数やサービスは容易されており(され始めており)、ユーザーが選択したLLMモデルを利用することができる | |||
(コメント) 現在利用できるLLMモデル | 各社のモデルを揃えていっているが、リージョンや用途(APIや事後学習:SFTなど)で限られるシーンもありという印象 | 最新の基盤モデル(GPT、Claude、Gemini)に加えて、OSSなども可 | Gemini、Claudeはもちろん、Vertex AI Model Gardenを通してLlama3系などOSSやHugging Faceからデプロイしたモデルなど可 | この点は各モデルの受け入れ対応とエンジニアリングも含め用途が広いDatabricksと、基盤モデルの一角であるGeminiを持つGoogleでの基盤が強い印象。 |
ベクトル検索(RAG基盤) | Snowflakeはお手軽にRAGが実現できる印象だが、実運用に対して物足りない印象。RAGの場合でも結局は試行錯誤(Docの当て方や検索、ピックの仕方など)が必要になるため、そうなった際にとれるアクションが少ない。検索の手法、リランキング、埋め込みモデルの拡張や多様性を考えると、Google、Databricksが有利な印象。 | |||
エージェント/アプリ開発基盤 | ー(Cortex Agentsのように限られたシーンでのAgent構築は可能であるが、DeepDiveするような開発はまだ難しい) | エージェントは具体的な業務フローと課題感に沿って丁寧に構築し、拡張していく必要がある。開発を行うにあたっては、選択するライブラリ等も重要になる。LangGraphやA2Aなど、コミュニティのサイズや今後の展望も加味して検討する必要もある。Agentのコアな機能作りこみはライブラリのお作法に乗っ取る形となるので、Platform側に期待することとしては、ユーザーとの接点(見せ方やIN/OUTの吸収)やデプロイ管理・監視になる可能性もあるので、今後そのような点も期待してアップデートも確認すべき。 | ||
ML/LLM運用(実験/レジストリ/評価) | ー(明確な実験管理などは不可) Cortex Playgroundのような比較/試用・テストはあるが、ニュアンスが違う | LLMは実験管理よりも評価管理のほうが重要である印象も強い。というのも、フラグシップな基盤モデルの利用や、ライトなSFTを用いる場合、試行錯誤するのはパラメータというより、LLMへインプットとアウトプットのセットに対しての評価となるためである。そういった点では、Googleはニーズを捉えて進めている印象があり、サービス内でそのまま利用できるMLflowもありがたいが、以前のML用途のニュアンスが強い印象がある。そのため、外部サービスとしてWandBやLangsmithを採用するケースもあり得る状態という印象。 | ||
(コメント)LLM視点での技術選定や開発のしやすさ主観 | 開発という観点では、機能や対応が足りていない部分があるという印象。ただ、それはどれぐらい作りこみたいケースがあるか次第であり、タスクが基盤モデルの精度次第なのであれば、あとはデプロイ・運用までがどれぐらい簡単か次第になる。そういう点においてはSnowflake上でデータ~LLMのすべてをやりきるという選択肢は今後増える可能性はある。 | LLM領域でもカバー範囲が広く、時代に合わせて機能を取り入れていっている印象。マルチクラウド化が進む中、どこで開発するか、ML/LLMのベーシックな環境をどう揃えるかとなるときに、LLM向けのライブラリ対応や最新の基盤モデル利用可は、ビジネスに向けて迅速に構築を進められる。 | Geminiを提供しているというのは大きく、現時点でモデルの精度が高いが故にGoogleで揃えていくかという風にもなりやすい印象。今年で言うとMCPといったプロトコルの登場など、新しい概念や考え方が登場したが、まだベストプラクティスが定まっていないシーンにGoogleにLLMの基盤があるということは先手で対応をとれる可能性も高く、安心感も強い。 | ー |
まとめ
結論として、3社とも「できます」が多いですが、得意な“入口”が違うのがポイントです。
明確にどのサービスが良いというのはなく、各サービスの強い部分と弱い部分(これからの部分)を理解いただいた上で
自社の状況(サービスを利用する人間のリテラシや将来的に解消したい課題感)や利用用途から選定していくことをおすすめします。
あと一点共通した課題感を挙げるとしたら、「サービス導入後の設計難易度の向上」という視点です。
ただでさえ、データ基盤の設計難易度(特にガバナンス)が増していたにも関わらず、LLMという視点まで入ってきている状況です。
将来的に解消したい点を見据えることは行いつつも、今の現場と乖離が起こらないように、ステップバイステップで
実現範囲とスケジュール、合わせて教育を進めることが非常に重要になります。
株式会社Roundaで支援できること
Roundaは、データエンジニアリング支援とLLM構築支援を“別物”として扱いません。データのパイプライン→ガバナンス→LLMの活用/RAG→エージェント運用までを一気通貫で設計し、PoC止まりにならない状態を作ります。
- 比較検討の壁打ち(要件の言語化):表の機能差ではなく、貴社の「制約」と「勝ち筋」に合わせてSnowflake/Databricks/BigQuery+Vertex AIの採用パターンを整理
- データ基盤の設計・実装:取り込み/変換/品質/ジョブ/監査、まで含めて高品質なデータの管理と供給を実現
- LLM活用の本番化:ベクトル検索、権限制御、評価・モニタリング、コスト管理まで含めた、LLMのシングルなタスク/RAG/エージェント実装など
- 運用設計:メタデータ設計や変更管理を含め、属人化を減らしつつスピードも落とさない運用へ、かつ網羅的な教育も支援します
「3社のどれが正解か」ではなく、貴社のデータと意思決定が速くなる“全体設計”から一緒に決めたい場合は、ぜひご相談ください。



